テスラのオートパイロット死亡事故を検証する
テスラ車の死亡事故が自動運転中に発生しました。
アメリカのNHTSAによるとフロリダ州の高速道路で、オートパイロットを動作せたモデルSの前方に、横切るようにトレーラーが進入。テスラの解析では、強い日差しのためドライバーもオートパイロットもトレーラーを認識できず、ブレーキが動作しないままトレーラーに潜り込み、ドライバーが死亡した。
http://mainichi.jp/articles/20160702/ddm/008/030/036000c
このような事故は遅かれ早かれ起こることですから仕方が無いことでしょう。
このような事がニュースになるのは良いことでしょうし、他の自動車メーカーにとっても、詳細を調査して結果を公表して欲しいと思っていることでしょう。
アメリカの自動車メーカーが矢面に立って、公からの批判にさらされるのは、日本の自動車メーカーからするとラッキーかもしれません。
ただ、亡くなられた方にはご冥福をお祈りします。
事故はなぜ起こった?
事故が何故起こったのかを把握するのは非常に大事です。
きっちり解析出来ていて、真の事故原因が特定されていれば、正しい対策が出来ますが、解析が甘いと対策がムダになってしまうことがあります。
タカタのエアバッグなども、乾燥剤を入れたエアバッグは問題無いことに現状ではなっていますが、本当に問題ないのかを近々証明しなければなりません。
今回の場合、トレーラーが左折しようとした際に、トレーラーの色調が白く、強い太陽光に照らされていた要因で、トレーラーとの距離を誤検出したため、モデルSが自動でブレーキしなかった事が原因の様です。
モデルSには、フロントウィンドウ上端に光学カメラ1眼があり、フロントバンパーにはミリ波レーダーがあります。そして、前後バンパーには周囲をぐるっと見渡せるように12個の超音波センサーが付いています。
12個の超音波センサーは、オートパーキング(自動駐車)時の障害物検知用なので、今回のオートパイロットには関係ないです。
前のクルマとの車間距離を測定するのは、ミリ波レーダーの役目です。
光学カメラ1眼だと画像から距離を推定するのは難しいと思います。せめてスバルのアイサイトのように、位置出しとキャリブレーションを行った光学カメラ2眼であれば、正確な距離も測定できると思うのですが、モデルSの場合は、ミリ波レーダーだけで距離を測定しているのだと思います。
ミリ波は雪・霧等の悪天候下でも安定した検出性能を持っていることが特徴です。
今回の場合は、雪でレーダーの表面が凍結するような事態ではないですね。
『強い太陽光に照らされた』のが要因です。
では、強い太陽光によって、どのような不具合になるのか?ですが、
光学カメラの場合、アイサイトでも、大雪の最中に、トンネルの入口で照明に照らされた雪に反応して急ブレーキがかかった事例があります。
人間の目でも、暗いところから急に明るい所に出たら、視覚が慣れるのに時間がかかりますよね。光学カメラでも同じです。むしろ、光学カメラの方が、人間の目よりもダイナミックレンジといって、暗いところから明るいところまで対応できる照度の幅が狭いです。照度の幅が大きなカメラが非常に高くなってしまいます。
テスラのモデルSもカメラで認識できない状態では急ブレーキをかけるくらいの方がむしろ安全なのかもしれないです。
ただし、トンネルの入口などではご検知する可能性があるので、ナビゲーションシステムと連動させてトンネルの入口では、急ブレーキは控えて、お知らせとしてのインフォーメーションを出すとかすれば良いように思います。
そして、ミリ波レーダーですが、これにも欠点があります。
ミリ波レーダーは、先行車両からの反射波を受信して先行車両との距離を測定します。しかし、反射波は、他車の車載レーダーからの干渉波や多重の反射波、歩道橋やガードレールなどからの反射波からの影響を受けます。
ミリ波レーダーの波長は、1~10mmで、太陽光の波長は下図のようになりますので、太陽光そのものがミリ波レーダーの受信に悪さすることは無さそうです。
問題は、『トレーラーの色調が白く強い太陽光に照らされた』とのことなので、トレーラーからの反射がプリズムのようになって、ミリ波レーダーの波長を含んでしまったのかもしれません。
ミリ波レーダーによる誤動作は日本でも非常に良く起きています。
これにより、急ブレーキがかかるので、『後続車両から追突されるのでは?』とのキケンを感じて、システムをオフする人や自動車メーカーにクレームとして連絡する人も少なくありません。
日本車ではこれまで、急ブレーキがかかってキケンでしたが、テスラの場合は、ブレーキをかけないでドライバーに操作させるようにしているのですかね?
ブレーキをかけて欲しくない時に急ブレーキがかかるとクレームになりますし、
ブレーキをかけて欲しい時にブレーキをかけないと大きな事故につながってしまいます。
現状では、100%判断できるクルマは作れません。
オートパイロット中に退屈になって寝てしまうドライバーの動画がyoutubeにもアップされていますが、キケンと隣り合わせです。
今回の事故に関しても、どのように対応するかが非常に重要になってきます。
テスラはどう対応するか?今後に注目したいです。。。