『ディープラーニングが変える車載/組込みシステムの最新動向』エヌビディア講演、自動運転動向まとめ
2016年5月13日(金)に講演された
『ディープラーニングが変える車載/組込みシステムの最新動向』
のまとめです。
収容人数1000人の会議場での講演だったのですが、満室で立ち見が100人以上は居たのではないかと思います。また会場の外まで人があふれていました。
講演は、エヌビディア日本代表兼US本社副社長の大崎真考さんです。
この方は、以前はテキサス・インスツルメンツでマーケティングをされていた方です。
マイコンなどのICメーカーに在籍している人達は、同業他社に転職する人が非常に多いです。
組込みを仕事にしている人にとっては、エヌビディアへの転職はやりがいのある仕事になりそうです。
講演のサマリーとしては、タイトルが素晴らしい割には内容は、エヌビディアの宣伝に近い内容でした。
エヌビディアの紹介
エヌビディアはUSカリフォルニア州サンタクララで1997年に創業。
エヌビディア自体はファブレスメーカーなので、実際に作っているのは台湾のTSMCなどです。
従業員は1万人(非常におおい)そのうちの8千人が技術者で、4千人がソフトウェア開発に従事している。
チップを自社で製造しているが、プラットフォーム(GPUなど)を商品として売るビジネスモデル。
磨いてきた技術は『並列処理』、インテルがメニーコアといってもコア4+ハイパースレット程度の構成しか無いのが、エヌビディアでは、数百個のコアで並列処理をしています。
面白いのは、2003年にクロックによって性能を上げる時代から、並列処理によって性能を上げる時代に変わっていったところですね。
並列処理が重要となるアプリケーションというのは、そんなに多くないと思っています。
画像などは並列処理によって単位時間あたりの精度が増します。それが重要な意味を持っていれば並列処理は非常に良いことです。
しかし、たいてい必要なのは時系列計算のような並列で計算できず一つひとつが終わらないと次の計算が出来ない演算だったりします。
現状、技術の面でCPUのクロックが上げられない状況で、エヌビディアは並列処理によって、どうやったらトータルの処理能力を高められるのかに挑戦しています。
自動運転車とディープラーニングについて
去年及び今年は、自動運転やディプラーニングが非常に注目を集めました。
たとえば、マイクロソフトとグーグルが画像認識で人間を超えています。(ImageNet)また、マイクロソフトのスーパーディープネットワーク、バークレーのブレットは全てのロボットを1つのネットワークでつなげることを試みています。
DeepSpeech2は2つの言語を1つのネットワークで実現しました。
新コンピューティングモデルがポップカルチャーになったり、
AlphaGoは囲碁の世界チャンピオンを倒しました。
人工知能が注目されたのは、今までは専門家が時間をかけてモデル化して認識していた。
その段階では、どのようなモデルが一番マッチしているかが重要だった。
しかし、それでは時間がかかるし、上手く行かない事も多い。そこでデータベースをたくさん持っておいて、そのデータベースとマッチするかどうかをディープラーニングによって物体認識する技術が開発された。
人間の画像を見て瞬時に判断した時のエラーレートが5%程度のところが、ディープラーニングでは、5%以下とすることが出来た。
要するに、『ディープラーニングが人間を超えた』というところに衝撃が走った1年だったということです。
ディープラーニングとは何かを一言で説明すると、
『人間の直感に近いコンピューティング』の様です。
これによって、トヨタは2016年1月に1000億円を投じてシリコンバレーにAI研究所を設立しました。
1000以上のAI企業が5000億円を調達して研究を行っています。
10年で50兆円の市場が創出される見込みです。
ディープラーニングは、広告サービス、投資、メディア、石油ガス、製造、小売などのソフトウェアでの貢献が期待されている。
IBMのコグニティブビジネスは200兆円市場になる見込みです。
そして、テスラのモデルSではオートパイロットという自動運転する車を実現しています。
セルフドライビングをコンピュータサイエンスで挑戦する時代が来ています。
Uberはネットでのタクシーサービスを実現し、Audi、BMW、ダイムラーはノキア社の地図事業部門HEREを買収。
ボルボは2017年に自動運転車実験プロジェクトDriveMeを始めます。
アメリカの運輸省は、コンピュータを人間と同じドライバーとみなすと宣言しました。
トヨタ、日産、ホンダなど6社は自動運転で共同研究を始めます。
GMは、自動運転システムを手掛ける新興企業のCruise Automationを買収しました。
トヨタ自動車のAI研究所の自動運転への取り組みですが、120万人が毎年交通事故でなくなっています。これを減らすのが目的です。
トヨタの優先順位は、安全性、環境、全てへの乗り物、ファンツゥードライブです。
トヨタがまさにやりたいのは、自動運転として
- おかかえ運転手(chauffeur)
- 人工知能アシスト
の2つを実現する。さらに、この2つをハイブリッドさせたい。
トヨタはハイブリッドという言葉が好きですね。。。
また、注意点としては、下図のプレゼン資料にchaufferと書いてありますが、おかかえ運転手の事なので、正確には、chauffeurですね。
そして、これを実現するためには、膨大な量のシミュレーションが欠かせない。
トヨタでは世界さう高水準のドライビングシミュレーターがあるのでそれを活用する。
エヌビディアの広告宣伝の部分
さて、これから先はエヌビディアの広告宣伝の部分です。
自動運転は制御なので、入力があって、制御量を決めて、出力するという形式になりますが、エヌビディアでは以下のようにマッピング、GPSによる自己位置認識、車両の外界センシング、制御出力の4つに分けています。
では、これをどうやって実現していくかですが、エヌビディアでは、計算用のプラットフォームを提供している。
GPUコンピューティングとして、Tesla P100がある。
なぜTeslaという名前なのだろうか???
ディープラーニング用のコーパーコンピュータは、このP100を8個搭載している。
AUDIやテスラ、メルセデス・ベンツ、ボルボ、BMWでGPUが使われているようです。
自動運転向けには、DrivePX2というものがあり、これもスーパーコンピュータです。
DrivePX2は基本的には開発プラットフォームです。
これをそのまま量産車に搭載を予定しているメーカーもあれば、これでテストを行って、量産には、一部の機能のみを採用したユニットにして搭載する予定のメーカーもある。
DrivePXは空冷でしたが、DrivePX2は液冷になりました。
車のエンジンが水冷なのは分かりますが、ECUまで水冷ですか。。。
DrivePX2はMacBookPro150台分の処理性能を誇りますので、いかに速いかがわかります。MacBookProには普通のIntelのマイクロプロセッサーが使われているわけで、そのうち、Intelのプロセッサーは駆逐されるかもしれませんね。。。
このDrivePX2を使うことで、フォードでは歩行者検出アルゴリズムのトレーニング効率が30倍になったり、アウディはドイツのルール大学ボーフムにおける交通標識データベースを4時間弱で学習し、96%以上の精度で識別したとの事です。
最後にROBOCARに関する紹介がありました。
10チームが全く同じハードの車を使って、ソフトウェアのみの変更でAI(人工知能)の技術を競います。
この車両にNVIDIAのDrivePX2が採用されています。
この車両で、1時間程度、最高速300km/h以上、F1形式でレースを今年の10月にも実施するそうです。
F1と違ってエンジン駆動ではなく、モーター駆動なので、音が静かだけど、車速は速く、加速が良い。AI(人工知能)はまだ発達していないし、ぶつからない事が前提ではないレースだから、ぶつかって大破することも最初は多いと思いますし、バッテリーに負荷をかけすぎて燃えてしまうこともあるでしょう。
人間が乗っていないから、隔離されていれば、何でも出来てしまいます。その結果がどうなるのか、面白いかもしれませんね。。。