叱らない文化と叱る文化から組織の在り方を考える
叱る文化の職場が伸びないのだとすると、パワハラが横行する会社は、早めに転職した方が良いのでしょうね。そのうちそんな会社はなくなります。
まとめ
- 『叱る』のではなく『感謝する』
- 同じ失敗を繰り返さないためにどうするかが重要
- 失敗した社員にしかわからない状況や心の内を話してもらう事が重要
- 全損事故の8割はヒューマンエラーなので、それを減らすのが効果的
- ヒューマンエラーはゼロに出来ないという前提で飛行機を運用する
- 失敗した社員からのヒアリングに処罰的な意味はない
- 感謝の姿勢で接することで一緒に安全を守るという信頼関係を構築できる
- ANAは『安全が経営の基板であり社会への責務』としている
- 安全の優先の結果、問題の無い引き返しがあったとしても容認している
CAはプライドが高いですから、自分の過失を認めた事で会社にいられなくなるようだったら、反発、抵抗するでしょうね。
それでは、トラブルに対して真の原因が分からないでしょうから、当事者のマナマナしい声を聞くために『叱る』のではなく、『感謝する』というやり方は納得がいきます。
『 エンジンのあのボルトをちゃんと締めたかどうか確認したい』と整備士が言い出して、駐車場を出て滑走路に向かっている飛行機を引き返し点検したこともあるそうです。出発が遅れ、お客様に大変な迷惑をかけてしまいましたが、当時の整備部門のトップは整備士の行動に対して、『よく言ってくれた!』と感謝したそうです。
これは本当の話なんでしょうけれど、無闇やたらとそのような状態を許していたら、それこそ経営に差し障ります。
あの整備士が言うのであれば仕方ないからちゃんと確認しようということではないかと思います。
そのように思えるほどの体制がANAには出来ているということでしょう。
そもそも航空機事故にはどのような要因があるのでしょうか?
国土交通省航空局が平成28年6月に出した『航空輸送の安全にかかわる情報』には、以下のデータがありました。
通常、飛行機の安全上のトラブルですから、被雷や鳥衝突なども可能性としてあるのですが、28年の報告書には記載がありません。
この報告書の中で安全上のトラブルが一番多いのは機材不具合でした。
機材不具合に関しては、シングルフェイルで重大事故に繋がる要因は飛行機に無いので、機材不具合自体は、あまり気にする必要がありません。
また、発動機の異聞吸引による損傷は鳥衝突などですが、割合は約2.4%ですが、人間や運用だけで避けられない要因です。
回避操作に関しては、分類としてヒューマンエラーに属しますので、
結局、航空機の安全上のトラブルにおいてヒューマンエラーの占める割合は約54%になります。
生死にかかわるような重大な事故に関しては、機材不具合ではなくヒューマンエラーが原因のほとんどだと思って良いと思います。
ちなみに、定期航空に限った場合の世界の航空死亡事故の推移ですが、下図のように1990年代以降、安全対策の取り組みによって世界的な死亡事故率は低下傾向にあります。
ANAグループの安全理念と安全行動指針
ANAには、『安全は経営の基盤であり、社会への責務である』というような安全理念があるようです。
また、安全行動指針も定められています。
最後に『車内外の教訓から学び、気付きの能力を磨きます。』とあります。
やはり、過去のトラブルの事例をどれだけ掘り下げて調査し、また情報共有されているかが重要なのですね。
ただ、このような事まで行動指針にうたわなけれいけないのには、国からの指導も少なからずあると思いました。
たとえば、国土交通省のホームページを見ると、運輸安全委員会という組織があり、
過去の航空機による事故の詳細報告書が見られるようになっています。
些細な事故であっても詳細に調べあげられてしまうので、
それに対応するために、『叱る』ことをやめたのは素晴らしいことのように思います。
ANAの叱らない文化と旧国鉄の日勤教育から組織のあるべき姿は?
旧国鉄には、『日勤教育』というものがありました。
乗務中や勤務中にミスをした運転しや車掌、駅務員などを列車運行や通常の業務から外してミスを起こさないように指導を行うもので、ヒューマンエラーの再発防止として日勤教育を行っていた。
この日勤教育には、非人道的なパワーハラスメントの要素を含む内容が含まれていたことが明らかにされており、肉体的・精神的・経済的な打撃を与える「懲罰」的や「暴力」的なものもあった。
ANAとの対比で考えると、航空機の定期運用も、電車の定期運用もどちらも同じ公共交通機関であり、同じように社内での教育を受けたプロによる運営である。
電車の事故では、福知山線脱線事故など、重大な事故が多いのは事実ですね。
ただし、新幹線は最初の運用から今まで一度も人身事故を起こしたことがない事もあり、一概には言えないが、パワーハラが横行するような組織では、より深く内省による原因の追求と行動の変化は行われず、それゆえにトラブルは無くならないのでしょう。
そのような組織は自浄作用も期待できません。
経営者であれば、将来を考えるのであれば一番気をつけるべき事でしょうし、
従業員であれば、早めに転職する方向が良いのかもしれませんね。。。